左折のしかた(事業承継のお話)

あなたは自動車運転免許歴30年。車に乗っています。
この先の交差点を左折しようと思います。

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「ウインカー出して、左に曲がればいいよね」

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あなたは今、運転免許をとるために教習所に来ています。
仮免をとって、今日は路上教習です。
この先の交差点を左折しようと思います。

頭の中で左折の方法を思い出しながら、
・バックミラーで安全を確かめて、
・左折しようとする交差点から30メートル手前でウインカー出して、
・あらかじめできるだけ道路の左端に寄って、
・交差点の側端に沿って徐行しながら、
・巻き込み防止のためバックミラーや目視で安全を確かめて、
・膨らまず、縁石に乗り上げないように、
・ハンドルを左に回して・・・・

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ある会社でのお話です。
父である社長は、息子に会社の経営を譲りたいと思っています。

お父さんはこの道30年、一から会社を立ち上げました。
現場で先頭になって働き、営業し、人をまとめ、金策に走り、今日があります。

息子はこの会社に勤めていますが、父の目から見ると物足りません。
息子は息子で、社長である父の言うことを聞きません。

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ある日、息子から話を聞くと、
「自分は一生懸命やっている。まだまだ努力や経験が足りないのもわかっている」
「社長の言うこともわかるが、そんなにいっぺんにできない」
「自分が社長になれば、ちゃんとできる」
こんな意見が出てきました。

社長に話をすると、
「あいつは何もわかっていない」
「技術を学ぼうともしないし、営業にもいかない」
「今はまだオレの力でなんとかできるが、息子の代になったら・・」

ということで平行線です。

「子供しかるな、いつか来た道。年寄り笑うな、いつかゆく道。」

ちょっとニュアンスは違いますが、冒頭の左折の話と同じです。
誰しも最初はできません。
ですがやる気になって練習し、体得し、やがて無意識にできるようになります。

「ウインカー出して、左に曲がる」

確かにこれで左折はできますが、途中の多くのプロセスが省略されています。
自分が無意識に、簡単にできることでも、初心者はわからないのです。
多くの練習が必要なのです。

親子だから言いづらい部分も多いです。
言葉も往々にして足りません。

お互いがもう少し素直に歩み寄る、そういう姿勢の中で後継者は育っていきます。

中小企業の事業承継は大変です。
時間がかかりますので早く、強い信念のもと、行わなければならないのです。