Q&A行政、PDF行政

分かりやすいものではありますが。

■ ■ 発売中 ■ ■
決算書のつくり方
kindle版 

なぜ社長は決算書に興味がないのか?
Kindle版

ゼイキンは法律で決まっている

所得税の確定申告や消費税の申告。
税金を計算して申告し、税金を払います。

では何に税金がかかって、いくらの税金を払うのか?
これは全部法律で決まっています。

(参考記事)
・原則納税者有利です(条文をよく読まないと間違えます)

この記事にも書きましたが、計算方法も文章で書いてあります。
たとえば、

〜当該基準期間に含まれる事業年度の月数の合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額〜

これは消費税の納税義務の判定の計算方法の一部分です。
4ヶ月とか5ヶ月のとき、4/12とか5/12とかするわけですが、これにも順序がある旨が書かれています。

なぜかというと、「かけてから割って計算した答え」と、「割ってからかけて計算した答え」が違うことがあるからです。

4/12とか5/12と、わかりやすく書いたつもりが、間違いを引き起こすこともあります。

税法は分かりにくいので

国税庁のHPは税務について、いろいろな情報があります。
解説コーナーやQ&A、FAQ、PDFでダウンロードできる資料も増えています。

最近は電子化、ネットの普及で便利にはなっています。

税法も条文を読んだだけでは分かりにくものが多いし、俗に実務書と呼ばれる解説書は分厚くて高いし、おまけに税法は毎年のように変わるので、書籍では少しツラいものがあります。

ーー
以前から税務署には「通達」というものがあります。
これは、税務署の職員向けの内部文書です。
「税法のトリセツ」のようなものです。

実際の実務に当たり、税務職員が困らないように、
「この法律の意味はこういうことなので、こうやって取り扱うように」
といったことが書かれています。
あくまでも「税務署側の解釈はこうだ」というものなのです。

本来は税務職員向けのトリセツなのに、これが事実上の法律のようになってしまっています。
「通達行政」と言われ、ときに問題になっています。

税務署側の解釈(通達)が違っていないとは限りません。

通達行政からQ&A、PDF行政に・・

ただ最近、Q&A、FAQ、PDFがちょっと過ぎているように感じるのは私だけでしょうか?
通達行政からQ&A、PDF行政になっているかのようです。

通達は税務署内の内規のようなものですから、税務職員がこれに縛られます。
納税者には関係ないのですが、実務上判断の拠り所になるケースもあります。

これはこれで?でもあるのですが、Q&AやPDFは通達よりも軽いものになります。
いわばパンフレット、参考資料です。

しかしここに事細かく「ああです、こうです」と書いてあれば、それに引っぱられやすくなります。

最近では消費税のインボイス制度の関係で「この場合はどうするの?」が増えていて、新しいものができたり、内容が頻繁に更新されたりしています。

たとえばこちら

もともとのものは、平成30年6月にできています。
その後令和3年7月にこのQA57を含め追加項目が盛り込まれ、令和4年4月にこのQAは改定されて、現在に至っています。

「改良が加えられていて、わかりやすくなっているならいいのでは?」

もちろん、そういう部分は多いと思います。
でも、ここには「どこがどう改定されたか」は書いていません。

解釈のしかたなので、やり方、書き方によってはミスリードになってしまうこともあります。
これはあくまでも「税務署側の」解釈だからです。

誤解を招かないためには、履歴か過去のものが見られるようにしておくべきだと思いますが、「最新のもの」しか載っていません。

ーー
なお、税法の解釈は、文理解釈が大前提です。
文理解釈が崩れたり、趣旨解釈が広がってしまうと、財産権を侵害されたり、課税の公平が保てなくなったりすることがあるからです。

現実的には難しい税法の(文理)解釈ですが、その解説としてQ&Aなどを作ってくれるのであれば、履歴などの経緯をいつでも見られるように残しておく必要があると思います。

もちろん「Q&A、FAQ、PDFに書いてあったから」では、最終的には通らないこともあります。

特に税理士は、Q&A、FAQ、PDFはあくまでも「参考レベル」として使うようにしなければなりませんね。

ーーー