所要の措置が講じられました

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税務署から「改正のあらまし」など、ガイドパンフレットが送られてくることがあります。
税法は難解なので、わかりやすくまとめてあるパンフレットは役に立ちます。

パンフレットを読んでもわかりにくし

先般送られてきた「源泉所得税の改正のあらまし」の10番に、こんな文言があります。

10 源泉徴収及び確定申告における配偶者に係る控除の適用の見直しが行われました。

この改正は、令和2年1月1日以後に支払うべき給与等及び公的年金等並びに令和2年分以後の所得税について適用されます。

(1) 給与等又は公的年金等の源泉徴収における源泉控除対象配偶者に係る控除の適用については、夫婦のいずれか一方しか適用できないこととされました。

(2) 居住者の配偶者が、給与等や公的年金等の源泉徴収において源泉控除対象配偶者に係る控 除の適用を受けている場合(その配偶者がその年分の所得税につき、年末調整をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合又は確定申告書の提出をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)には、その居住者は、その年分の所得税の確定申告において配偶者特別控除の適用を受けることができないこととする等の所要の措置が講じられました。

これ、さっと一読しても意味がよくわかりません。
いったい何があって、所要の措置が講じられるようになったのでしょうか?

扶養控除等申告書に盲点?

平成30年の改正で、配偶者控除については大きく変わりました。
用語の定義が変わったり、配偶者の区分が増えたり。

扶養控除等申告書には、源泉控除対象配偶者を記入する欄があります。
ここには、本人の年間所得が900万円以下と見積もられる方(ご主人とします)に配偶者(奥さんとします)があって、その配偶者の年間所得の見積額が85万円以下の方を書く、となっています。

例えば給与収入しかない方の場合、ご主人の年収が1,120万円以下で、年収150万円以下の奥さんがいる場合、ご主人の扶養親族等申告書に奥さんの名前を書くことができます。

そうすると、ご主人の毎月の給与から引かれる所得税の金額は、扶養親族等の数を1人(配偶者分)とカウントして税額表を見ることになります。

奥さんはというと、ご主人の年間所得は900万円以下と見積もられる方のため、奥さんの扶養親族等申告書の源泉控除対象配偶者欄に、ご主人の名前を書くことはできません。

奥さんの毎月の給与から引かれる所得税の金額は、扶養親族等の数を0人として税額表を見ることになります。

ではもし、お二人とも給与収入が150万円以下だったらどうなるでしょう?

答えは、ご主人は奥さんを、奥さんはご主人を、それぞれ扶養親族等申告書の源泉控除対象配偶者欄に記入することができます。

すると、お二人とも毎月の給与から引かれる所得税の金額は、扶養親族等の数を1人(配偶者分)とカウントして税額表を見ることになります。

そしてそのまま年末調整が行われると・・・
双方がお互いを配偶者特別控除の対象としてしまい、二重に適用ができてしまったのです。
(本来はダメなんですが)

所要の措置が講じられました

国税庁が30年分の申告状況を見て、配偶者関係の控除が多いのに気づき、改正となったようです。

平成31年(令和元年)はすでに扶養親族等申告書の記入は行われ、会社に提出されています。
そのため今年は間に合いません。

まだ本年分の「年末調整のしかた」や扶養親族等申告書の書式が公開されていませんが、おそらく用紙の記載で二重控除が起きないような形になるという、所要の措置が講じられるものと思います。

では二重になった、つまり引きすぎた税金を返さなければならないのか?
これは推測ですが、ないのではないかと思います。

その理由は、年金受給者についても同様のことが起きているからです。

しかも年金受給者は「申告不要」という制度があるため、税務署の書式に従って正しく記入し、正しく源泉徴収をされ、申告不要という適法の制度を利用した。
落ち度があるとは言えません。

給与所得者には返せ、年金受給者は見逃し、ということもできません。
なので最短で、令和2年からの改正とし、損害を最小限にするということで幕引きでしょう。

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