棚卸しというもの


(写真は記事とは特に関係ありません。何か食べたくなったので ^^)

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なぜ社長は決算書に興味がないのか?
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棚卸しの目的

物販なり、飲食店なり、モノを扱う事業では避けられない棚卸し。
一体何のためにするのでしょう?
税理士なり、経理部長なりに聞くと、どう答えるでしょう?

「帳簿と現物のチェックだよ」
「利益を計算するためだよ」

なんて、もっともらしく答えが返ってくるでしょう。

もしよかったら、さらに突っ込んで、
「何で?」と3回ぐらい聞いてみてください。
答えに詰まったり、君にはわからないよって顔する人がいるかもしれません。

棚卸しの一番の目的は、「ほんとうに、そこにそのものがあるか?」の確認です。
そして、もし台帳の記録と合わなければ、それを調べるわけです。

棚卸しというと、商品というイメージが強いですが、会計(決算)においては、貸借対照表に載るものすべてが棚卸しの対象です。

現金も、預金も、売掛金も、固定資産も。
お金が一番分かりやすいですね。

帳簿に載っているものは、ほんとうに会社にあるのか?
実査が必要なのです。

棚卸しで利益を計算するのか?

売上原価=期首棚卸高+当期仕入高ー期末棚卸高

多くの会計人は、この算式が頭から離れません。
そう、有名な漢字だらけの式です。

アラリ(利益)を計算するためには、この算式が欠かせません。
だから、棚卸し(正確には棚卸金額)が必要と叩き込まれています。

期末棚卸高が出ないと、売上原価が計算できない。
売上原価が計算できないと、利益が計算できない。
棚卸しは年に(あるいは月に)1回だとしたら、年末(月末)まで利益がわからない?

商売をやっている以上、そんなことでは潰れてしまいます。
いくら儲かっているか、お店の人は概ね把握しています。

○○円で仕入れたものを、△△円で売っている。
A商品が100個、B商品が50個売れたから、アラリはいくら。
給料が月に○△円、家賃やらが△○円だから、だいたい儲けはこのくらい。

何がいくつ売れたかは、だいたい把握できています。
いや、レジのボタンを押せば、集計はあっという間・・

簿記はなぜ進化していないのか?

「経営するなら、簿記3級ぐらいは・・」
こんなお話もよく聞きます。

私もそう思います。
簿記の「仕組みの」理解は、とても有用です。

ただ、1つ残念なものがあります。

それは、売上原価の出し方。
商品の販売に関する記帳の仕方。

未だに昔むかしの、パソコンなんて無い時代の、手書きの帳簿の概念のままなのです。
そして、税法に引っ張られて、原価の出し方は雑になっています。

簿記の試験もそれに引きずられています。
結果として、会計人も「あの算式」に引きずられます。

分記法と三分法

売上原価の求め方(商品の記帳方法)には、2つの方法があります。
分記法と三分法です。

分記法はざっくりいうと、商品の帳簿に、仕入れた商品と売れた商品を記録して、売上原価を計算する方法です。
三分法は、仕入れた商品を仕入れの帳簿に記録し、売れた商品は売上の帳簿に書きます。
売上原価は、最後に残ったもの(在庫金額)を計算して、仕入れの帳簿から引いて求める方法です。

商売をしている人の頭の中は、絶対分記法です。
それなのに、便宜的な方法であった三分法を主の方法として教えるから、会計人は社長と話が噛み合わないのです。

簿記の教科書には、だいたいこう書いてあります。

分記法では販売に際して、その商品の原価が分からないと処理できないというデメリットがあります。大量の商品を扱う会社では販売の都度、その商品の原価をいちいち調べるのは非常に手間がかかります。

このような理由から一般の会社では多くの場合、三分法が採用されています。試験においても重要性が高いのは三分法で、指示がない限り三分法による記帳が前提となっています。

いつの時代の話でしょう?
今はルカ・パチオリの時代じゃありません。

今どきはコンピュータで入出荷、売上・アラリは一目瞭然です。
会計人こそ時代遅れ。
取り残されないようにしましょう。